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ストーリー:

STORY09 回想

BLUE SKYの地図を手に入れるため伝説の都市を訪れた竜也たちは、過去の記憶を一切持たない管理人D-Tと出会った。伝説の都市にそびえるたった一つの塔。それはBLUE SKY国最高機密機関、諸外国通信局の中枢機関だった。竜也たちは塔の管理人D-Tから伝説の都市を破壊しようとする『バロン』の退治を頼まれる。だが伝説の都市は『バロン』たちの仕掛けた爆弾で爆発。竜也たちが死を覚悟したその時、香蘭を救った花売りの女が現れた。女は正体は頼まれれば殺しまでするといわれる受頼人だった。その女が去り際に呟いた『一ノ宮王子』という言葉。竜也の正体を知る女は本当に『受頼人』なのか。竜也は霧がかかったままBLUE SKYの地図を求めて再び歓迎の港に戻ってきた。

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「竜也さん、カメリアさん」

「香蘭! どうしてここに?」

歓迎の港に戻ると聞き覚えのある声が聞こえてきた。振り返る竜也たちに香蘭が手を振り、息を切らせて走ってくる。

「真玉に皆さんの姿が映って」

「迎えにきてくれたんだ」

カメリアが笑顔を見せる。

「はい。あ、あの、それで大丈夫でしたか? 別の船に乗って行ってしまったので心配で」

香蘭は困ったような、嬉しそう顔で竜也たちに何度も頭を下げる。

「大丈夫、いろいろあったけど、無事にたどりつけたから」

竜也の笑みに、香蘭が複雑な笑みを見せる。

その笑みに竜也は塔の管理人D-Tのことを思い出した。

「ほな。元気でな。もし、地図が手に入って旅が終わったら、またここによってや」

「ああ、そのときはまた来るよ! な、竜也」

D-Tの言葉にカメリアがにっこりと笑顔を向ける。

「そうだね。でもD-T。そのとき、あなたがいなくなっていたら僕たちはズドンですね」

竜也がいたずらな笑みをD-Tに向ける。少し淋しそうな顔をしていたD-Tが頭をかき、明るい声を出す。

「また許可なしに来る気かいな! でも、安心しとき、必ずおるわ」

「でもさ、もし、記憶を取り戻したくなって、この島を出たら?」

「そんなことはありえへん」

「でも、もしかしたら、あるかもしれないじゃん!そのときは、俺たちと一緒に旅をしようぜ。過去なんてどうでもいいし。俺、あんた嫌いじゃないし」

執拗なカメリアの質問にD-Tが困ったような、嬉しそうな顔を見せる。

「まいったなぁ。でも、それは無理や」

「なんでだよ」

D-Tの言葉にカメリアが眉を寄せる。ユーイチがカメリアの頭を叩いた。

「何すんだよ、ユーイチ」

「だから貴様がばかだというんだ。その時は、すでにここでの記憶はない」

ユーイチの言葉にカメリアが、しかめっ面をする。

「ユーイチくんの言う通りや。その時の俺は、あんたらのことなんて覚えてない」

「それでも、いいじゃん」

カメリアの言葉に、その場にいた誰もが眉を寄せた。

「D-Tが覚えてなくても俺たちが覚えてるし、それでいいじゃん。な、竜也」

カメリアの顔に竜也が力強く頷いた。

「そうだね。僕らは絶対に忘れない」

ユーイチが、ふん、と小さく鼻を鳴らし、D-Tがカメリアの頭をくしゃくしゃとかき回した。

「嬉しいこというてくれるやないか。それ聞いただけで頑張れるわ。俺は必ずここにおるよって。また来てな」

「D-T」

「なんや。竜也くん、まだ、何かあるんか。別れは長いとあかんで」

そう言って、行くように合図するD-Tに竜也は眉を寄せた。

「こんな偽の証明書を造って大丈夫ですか? ばれたら」

「大丈夫、安心してや。バレるようになんて造っとらんよって。心配せんでもあんたらが来る時に乗ってくるはずだった観光船に乗って、歓迎の港へと戻れるわ」

「ありがとうございます」

竜也は頭を下げた。本当なら政府に突き出されても文句が言える立場ではない。しかし、D-Tは何ごともないかのように笑っている。

「礼を言うんは俺の方なんやから、もうええよ! ほんま助かったし。それに楽しかったしな。ユーイチくんも、ありがとな」

「俺は礼などいわれる覚えはない。脅されたから仕方なくやっただけだ」

D-Tの笑顔にユーイチが顔を背ける。

「相変わらず厳しいな。ま、それもほんまのことだからしゃーないわ。ほな、俺は仕事があるよって、ここで失礼するで」

「それじゃあ」

「元気でな」

皆が口々にいい、D-Tがほんの少し真面目な顔をした。

「無茶して命落としたらあかんで」

「こいつらは殺しても死ぬようなやつらじゃない」

ユーイチの言葉にD-Tは嬉しそうに笑うと、軽く手をあげて塔の中へと消えていった。その後ろ姿に、D-Tと呼ばれる前の記憶を一切持たない彼の未来が、重くのしかかっているようにみえた。それはタツヤ・ウエップ・イチノミヤという名を捨てた自分よりも、もっともっと深く闇とも悲しみともつかない、何かがあるのだろう。竜也はその後ろ姿見えなくなるまで見送っていた。

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「でもよかったな。一時はどうなるかと思ったけどさ、これもみんな香蘭がくれたお守りのおかげだよ、な、ユーイチ」

カメリアの言葉にユーイチが眉をしかめる。竜也は思わず笑いをかみ殺した。

「なんだよ。照れることないじゃんか。ちゃんと身につけているくせに」

カメリアの言葉に香蘭が嬉しそう目を見開いた。

「こいつね、隠しているつもりだけど。俺にはみえちゃうんだな」

「カメリア!」

カメリアの言葉に今度は竜也が眉を寄せた。カメリアの見えると言うのは、かつての職業病のようなものだ。カメリアが『わかってるよ』というかわりに、笑みを浮かべてみせる。

竜也は肩で息を吐いた。

「何でもないんだ。それより香蘭、君がここにきたのは、それだけの理由ではないんじゃない?」

「あ、はい。実は、真玉に映り込んだものがあるんです」

竜也の言葉に香蘭は慌てて真玉を取り出した。

「映り込んだもの?」

「地図の在り処じゃないのか」

カメリアの疑問に答えるように、ユーイチがぼそっと言った。

「ど、どうしてそれを。もしかしても、もう」

「いや、まだ手には入れてないよ。ただ地図がある町がわかったんだ」

香蘭の驚いた顔に竜也は慌てて言葉を足した。

「そうだったんですか」

香蘭が肩を落とし、カメリアがしょうがないなぁあという顔を竜也に向けた。

「もう、竜也もユーイチも全然デリカシーってもんがないんだよな。せっかく香蘭が知らせにきてくれたんだぜ。それを」

竜也はカメリアに言われてハッとした。香蘭はそのことを知らせようとわざわざ、港まで息を切らしてやってきてくれたのだ。

「そうか、ごめん。僕、気がつかなくて」

「いえ。そんなつもりじゃ」

香蘭が首を横に振って下を向いた。

「本当のことだ。隠しても仕方がない」

「った~またそんな言い方する」

「いいんです! 本当のことですから。でもどうして」

「実は伝説の都市でさ」

『カメリア』

竜也はカメリアにだけ聞こえるように低い声で囁き、カメリアの腕を引っ張った。幸い、折よくなった銅鑼の音に声はかき消され、香蘭に気づかれずにすんだ。地図の在り処を誰から聞いたのか絶対に話してはないならない。それはD-Tとの堅い約束だった。


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