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ストーリー:

STORY08 覚悟

伝説の都市へ向かう船と間違え、芸術の森行きの豪華客船に乗り込んでしまった竜也たちは、最強最悪の海賊団と名高いサンピエトル・ドルニーエ、通称サンドルの襲撃に出くわした。自分の命とひきかえに船に乗る人を守ろうする竜也。その竜也を守ろうとサンドルの前に立ちはだかるカメリア。しかし、カメリアの行動も虚しくサンドルの剣は竜也に振り下ろされてしまう。その時、ユーイチが現れ事態は急変する。竜也たちはサンドルの船へと招かれサンドルの思いを知ることとなった。金持ちから金を奪い取っては困っている人に投げ与えているサンドル。そのサンドルを英雄と呼ぶ人たちもいる。しかし、その行為は犯罪の何者でもない。竜也はサンドルの思いを認めながらも、その行為を認めるわけにはいかなかった。「いつかこの国がかわったら、海賊をやめてもいい」。竜也の思いを知り、サンドルは約束を交わして去っていく。竜也はその約束を胸に刻みこんだ。

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「なぁ、いつになったら、あの塔につくんだよ」

サンドルに送られて、半日という驚異的なスピードで伝説の都市についた竜也たちは、伝説の都市の中心部という塔に向かって歩いていた。

「サンドルの話では、もう着いてもいい頃なんだけど。カメリア、今、方角はどっちを指している?」

「方角?」

「ばかか、貴様!」

「ばか?! なんで俺がばか呼ばわりされなきゃならないんだよ! 塔は目の前に見えているし、そんなもの見なくたって」

「ったく、方位磁針をかせ。早くしろ」

不服そうなカメリアから、ユーイチは方位磁針を奪い取るとその針盤を見守った。

「大丈夫だって。サンドルの言った通り、海から北に向かってあの塔を目指して進んできただから、ほら、西に進んで。な、なんでだよ! だって海で北を確認して、塔が見えて。塔は今も目の前に見えているし一体どうなっているんだ」

安心していたカメリアが新盤を覗き込み、頭を抱えしゃがみ込んだ。ユーイチが目の前に見える塔を指差していった。

「あれは蜃気楼だ」

「蜃気楼?」

「そうだ。こういった砂漠の土地ではよく起こる。ことこの都市では日常的に起こっているから、サンドルが方位磁針を」

ユーイチはそういって言葉を切り、ため息をついた。カメリアがゆっくりと立ち上がる。

「そうだったのかぁ、どうりでつかないはずだ……」

「ったく」

いつもならば『教えておいてくれないのが悪いんだよ』と返ってきそうなところだったが、カメリアは何もいわずに再び地面にしゃがみ込み頭を抱えた。

「そんなに落ち込むことないよ。間違えは誰にでもあるし、それに、僕らが確認しなかったのも悪いんだから。とにかく西に進んで来ってことは、今度は東に向かえば」

「いや、まて、どれくらい前から西に進んでいたかはわからない。もしかすると、東。悪くれば東南の方角にいかなければならないかもしれない」

竜也の言葉を遮りユーイチが方位磁針と歩いてきた道を見比べている。

「そうか」

竜也とユーイチは針盤と睨み合い、とりあえず北東の方角に一時間ほど進み、それでも着かないようならば南に進路をとろうと決めた。カメリアは二人が相談している間も、歩きだしてからも一言も話さず、黙って二人の数メートル後ろを歩いていた。

「大丈夫かな、カメリア。相当、落ち込んでいるみたいだけど」

「すぐにもとに戻る。しばらく放っておけ」

「それならいいけど」

竜也は時折、カメリアの方へ振り向いたが、カメリアは何も言わず、ただ黙って下を向いて歩いていた。

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「おい、あれをみろ」

進路変更して一時間もたった頃だろうか。蜃気楼ではないしっかりとした塔が、僅か数十メートル手前で突如現れた。竜也はすぐさま針盤を確認し、進路は狂っていないことを確かめた。

「これが伝説の塔か。カメリア、見てごらんよ……か、カメリア!」

竜也が振り返った瞬間、塔を目の前にカメリアは砂の上に倒れ込んだ。

「ユーイチ、カメリアが!」

ユーイチは竜也の声にすぐさま反応し、カメリアのもとに走った。

「おい、亀、どうした! おい、カメリア! しっかりしろ!」

「す、すごい熱だ!」

竜也は荒い息を吐くカメリアのおでこに手を当てた。体中熱を発しているにもかかわらず、カメリアはひと粒の汗もかいていない。

「おい、しっかりしろ」

ユーイチがカメリアの顔を何度か叩いた。だが、反応は返ってこない。

「カメリア、こんな具合になるまで」

「大方、迷惑をかけたと思って黙っていたんだろ」

「どうして気がつかなかったんだろう」

竜也はカメリアの様子を思い出し、自分に腹を立てた。カメリアの様子はいつもと明らかに違っていた。ユーイチがそれを制してカメリアの身体を抱き起こす。

「そんなこと言っても仕方がない。とにかく、どこかへ」

「あかん。あまり動かさんと、中へ運び。脱水か、日射病やろ」

二人が日陰になるようなところを探そうとしたとき、後ろから声が聞こえてきた。ユーイチの目が鋭くその男を睨み付ける。

「あなたは?」

「自己紹介は後や! それより、これはまずいな」

突然現れた男はそういうとカメリアの皮膚や熱をはかり、静かに息を吐いた。

「皮膚が赤いし乾燥しとる。汗もかいてへん。おまけにすごい熱がある。これは熱中症や。いくら若いゆうても、死にいたることもあるんや。そら、ぼやっとせんと中に運びぃ」

竜也は塔を目前に突然倒れたカメリアと同じく、竜也たちの前に突然現れた男の指示で、カメリアを塔の中へ運び込んだ。男が何者なのかはわからなかったが、今はカメリアを助けることが最優先だった。

「これで大丈夫や。しばらく寝かしときぃ。そのうち、目が覚めるやろ」

「ありがとうございます」

「礼なんかいらんわ。それよりこんなところに何しにきたん?」

「実は」

竜也が地図を探しにきたことを言おうとした時、ユーイチが目でそれを制した。男がその様子に笑顔を見せる。

「なんや、わけありみたいやな。ま、ええわ。俺には関係ないことやからな」

「あの、あなたは一体?」

「あぁ、俺か? 俺はこの塔の管理人や。前任者から引き継いで3年になる。あ、5年やったかな。よー覚えとらんわ。なんせ、ここには変化ちゅうもんがないからな。っと、そんな話はあとや。とにかく、俺は構わないから、ゆっくり寝かせてやり」

この塔の管理人と名乗るその男は、部屋から出ていった。

「一体、どういう人だろう」

「さぁな。だが素性がわからないうちは余計なことは言わない方がいい。俺たちはここに保管されているかもしれない地図を奪いにきたんだからな」

ユーイチの言葉に竜也は頷き、静かな寝息をたてているカメリアの顔を覗き込んだ。元々色白な顔がさらに青白く見える。竜也は気がついてやれなかったことが腹ただしく、ぎゅっと唇を噛んだ。

「カメリア、大丈夫かな」

竜也が振り返るとユーイチは壁にもたれ掛かって目を瞑り、静かな寝息を立てていた。極度の暑さで疲れたせいか、竜也もいつしか眠気に襲われ、まもなく深い眠りに落ちてしまった。


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