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ストーリー:

STORY06 少女

闇に閉ざされた町を出る決心をしたユーイチは母親に別れを告げるため、とある教会へと向かった。強大な十字架が聳える教会は、「裏切りの十字架」と呼ばれる不可思議な噂のある墓地だった。その噂を検証しようとカメリアの反対を押し切り、竜也とユーイチは、言い伝えられる呪文を唱えた。すると晴天だった空に突然の雷鳴が轟き、得体の知れない黒い竜巻きのようなものが竜也たちに襲い掛かってきた。何度ユーイチが切り裂いても襲いかかる黒い物体。3人の体力が限界に達し、竜也が覚悟を決めたときだった。一人の少年が竜也たちの前に現われ、呪文をとなえ黒い物体を消し去ってしまった。少年は何者であるかも告げず姿を消した。不可解な現象に首を捻りながら、3人は次の目的地である歓迎の港へと向かった。

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「うまい! 俺、ふぉんとしあわせ」

「おい、食うか、話すかどっちかにしたらどうだ」

咳き込みながら猛烈な勢いで食べるカメリアにユーイチが眉を寄せる。竜也たちが歓迎の港についたとき、すっかりあたりは闇に包まれていた。

「あ、ユーイチ、これ食べないの。もーらい」

竜也たちは、食事街にある一軒の店に入って夕食を取っていた。

カメリアはまるで数日何も食べていなかったかのように食べ続ける。竜也はその勢いに笑わずにはいられなかった。

「それで、これからどうやって探そうか」

竜也はまだ食べ続けているカメリアを横目に話を切り出した。

「まずは、この港にある骨董屋を回る」

あっさりと言ってのけるユーイチに竜也は眉を寄せた。

「骨董屋って、地図は新しいものじゃないとダメなんだけど」

「ばっかだな、竜也。古くても新しくても、そういうものはみんな骨董屋に集まってくるんだよ」

ユーイチの代わりに答えるカメリアに竜也は頷いた。竜也の関心に二人は何ごともないかのように話を続けている。竜也はそんなことも知らない自分にうんざりした。

「ユーイチ、それでこの港に骨董屋ってどれくらいあるんだよ」

「まぁ、ざっと、2、300ってところだ」

「に、に、さんびゃく~っ! この港町ってそんなにでかいのかよ。おいおい、しらみつぶしに探していたら、手分けしたって数日はかかるぞ」

カメリアの驚きにユーイチが顔をしかめる。

「今夜中に終わる」

「お、終わるわけがないだろ! 2、3件じゃなく、2~300件だぞ」

「だからお前は単細胞なんだ。しらみつぶしに探すばかがいるか」

ユーイチはそういうと立ち上がった。

「ほら、そうと決まれば行くぞ」

「い、いくぞって、俺、まだ食べてるのに。竜也、それ、持ち帰りにしてもらってくれ」

竜也が黙っている間にもこれからの予定は決定し、カメリアはユーイチに引きずられるように店を出た。結局のところ、自分は何の役に立っているのだろう。竜也は大きなため息をついた。カメリアの言っていた通り、すべてを王宮のせいにしても仕方がないが。

「すみません、全部でいくらですか」

竜也は気をとりなおして支払いをした。

「全部で53jennyです」

「あ、あのそれと残っている食事持ち帰ってもいいですか」

竜也は勘定を済ませると、カメリアの残したパン類を持たせてもらい、二人の後を追った。3人でたらふく食べて53jennyということは、この港の物価はかなり安い。それだけここの港が活気づいているということだろうか。

「おいおい、なんだよ、これ」

店を出て問屋街に来るとカメリアがしゃがみこんだ。骨董屋が並ぶ問屋街は見渡す限り店がびっしりとつまっている。一目見ただけではどこまでが一軒の店かもわからないほど隣接している。竜也は何だか嬉しくなった。

「壮観だね」

「おいおい、竜也頼むよ。そんな呑気な。この中からどうやって見つけるんだよ。地図のある店なんて」

カメリアの嘆きも無理はない。だが竜也はさほど心配していなかった。ユーイチが何の策もなく動くとは思えなかったからだ。

「で、ユーイチ、目星は?」

竜也の言葉にユーイチが頷く。ユーイチと合ってまだ日は浅いが、ユーイチの行動力と思慮深さには頭が上がらない。

「なんだよ、目星がついているなら早く言ってくれよ」

カメリアが嬉しそうにユーイチの肩を叩く。ユーイチが眉を寄せる。

「いわなくても普通わかる」

「わかんない」

「ったく」

ユーイチに詰め寄るカメリアに、ユーイチが顔を背けた。 竜也が二人の様子に笑い、カメリアが眉を寄せた。

「何だよ、竜也」

「いや、いいコンビだなと思ってさ」

竜也の言葉に二人は互いの見、顔を背けた。変に意地っ張りなところまでよく似ている。

「それにしても、大分、問屋街から離れたみたいだね」

「そうだな。なぁ、ユーイチどこまで行くんだよ」

竜也の言葉をカメリアが引き継ぎ、1メートル先を歩くユーイチに叫んだ。ユーイチが僅かに振り返る。

「次の角を曲がればつく」

ユーイチの言葉に竜也とカメリアは顔を見合わせ、早足で追い付いた。

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「いい加減に帰ってくれ!」

竜也らが角を曲がった時だった。一軒の店から押し倒されるように女の子が飛び出してきた。

「お願いです! 教えて下さい!」

状況から見て、女の子は店から追い出されたようだ。だが、女の子は諦めずに問屋の扉を叩いている。

「知らないと言っているだろう。もう帰ってくれ!!」

「お願いします!」

ぴしゃりと閉められている店の中から、店の主人と思われる人物の怒鳴り声が聞こえてくる。だが、女の子は何を言われても引き下がろうとしなかった。

「どうかしたのか?」

膝をついたままの格好で扉を叩く女の子にカメリアが近づき声をかけたが、女の子はカメリアをみるなり逃げ出してしまった。

「な、なんだ、今の?」

きょとんとしているカメリアにユーイチが追い討ちをかける。

「怪しげな奴に見えたんじゃないのか」

「何てこというんだよ。あぁ、俺、すごいショック。今の言葉にかなり傷ついた」

カメリアがその場にしゃがみ込む。

「大丈夫だよ、きっと、驚いただけだから」

竜也はカメリアの肩を叩いて笑顔を見せたが、カメリアは傷心な顔で地面を見つめている。

「おい、そんなやつほっとけ。中に入るぞ」

ユーイチはそういって、たった今、女の子が閉め出された店へと入ってゆく。竜也はカメリアを置いて店の中に入った。

「いいかげんにしてくれ! うちじゃないって、あ、いらっしゃい。これは失礼致しました」

店の主人は竜也たちが入るなりものすごい形相でどなりつけたが、人違いだったことがわかると、まるで別人のように愛想のいい声を出した。竜也はすかさず店の主人に女の子のことを訪ねた。

「あの、今、飛び出していった女の子は?」

「いや、それが妙なことをいいましてね。あ、いや、何でもありません。それより何かお探しですか?」

「地図を探している」

「地図ですか?」

店の主人とユーイチが話しはじめると、いつの間にか店に入っていたカメリアが竜也に耳打ちした。

「なんか、変じゃないか? 店のおっさん、何か隠しているみたいだ」

確かに、何か隠している。だが、一体何を隠しているのだろうか。

「そうか。邪魔したな」

ユーイチと店の主人との話は数分で決着し、竜也とカメリアは状況もつかめぬままユーイチに続いて店を出た。すると店の主人の声が後を追うように聞こえてきた。

「あ、お客人。この3軒先の大黒屋にはいったかい? まだなら一度いってみるといい。あそこはその手のものがよく入るから」

「ありがとうございます」

竜也たちは礼を言い、店の主人が教えてくれた次の店に向かった。

「でも妙だね。僕らにはあんなに親切なのに」

「ホントだよな。でもまぁ、俺には関係ないけど」

カメリアは膨れっ面をしている。あの女の子に驚かれたことを相当、気にしているらしい。竜也は思わず吹き出した。

「なんだよ」

「いや、なんでもない。ちょっと思い出し笑い」

「変なやつだな。おっ、2、3軒先っていうとここじゃないか」

カメリアが、そういって今度はいの一番に扉を叩き、竜也はユーイチの後に続いて店に入った。 

「ったく、あんたもしつこいな! ここにはないっていっただろう。あ、これは、これは」

竜也たちはまたも女の子に間違えられ、門をくぐるなり怒鳴り付けられた。その後も竜也たちは地図を探して紹介される店を何軒となく回ったが、地図は一向に見つからず、行く先々であの女の子と間違われるだけだった。ひどいときには入るなりヤジを飛ばされ、扉を閉められることもあった。

「一体、どうなってるんだ」

「わからないけど、僕たちの前を彼女が歩いていることだけは確かだね。それにしても、どの店の主人もあの女の子が何を探していたか教えようとしないのは何故だろう」

「気になるよな」

カメリアの言葉に竜也は頷いてみせた。その様子にユーイチが目を細める。

「おい、俺たちがここにいるのは地図を探すためだ。いいか、決して人助けの為にここにいるんじゃない」

「はいはい。わかってるって。な、竜也」

カメリアの言葉に竜也は曖昧な返事を返した。人助けなんていうつもりはないが、妙に気になるのは事実だった。

「もう、だめだぁ。俺、へとへと」

「そうだね、今夜はもう遅いから切り上げて明日にしよう。ユーイチもそれでいい?」

結局、次から次へと問屋を回り、竜也たちは街の西側に位置する一番はずれの店までやってきていた。あとは正反対に位置する、東の山道にある店の捜索だけだった。竜也たちはその残りの問屋を明日へとまわし、問屋街の中心地から僅かにと北にある宿屋に宿泊することにした。


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