MENU

ストーリー:

STORY10 聖地

地図の在り処だと思われていた伝説の都市で、竜也たちは地図の手掛かりとなる「芸術の森」に住む元老院の存在を知る。再び歓迎の港へ戻り、香蘭から地図に関するさらなるヒント「一本の大きな木と、その近くにある小さな家。そして、不思議な能力を持つ何者かの姿」を手に入れた。竜也たちはそれらの情報だけを頼りに、地図を手にすべく「芸術の森」へ向かった。

スポンサードリンク

「本当にここにあるのかな」

歓迎の港から北に10分程歩いたBLUE SKY建築層の繁華街で、竜也たちは遅い朝食を食べながら、元老院を見つけ出す方法を相談していた。

「それはわからん。だが、地図が手に入ればこの先どこへ向かおうとある程度の目安が立てられる。静かな町に行くいにもだ」

竜也の脳裏にシリウス三世との話が頭をかすめ、竜也はユーイチに曖昧な返事を返した。

「この国をどのように旅をしようと王子の自由だ。だが、必ず行ってもらいたい場所が3ヵ所ほどある」

「3ヵ所? その場所は」

シリウス三世の視線に竜也は僅かに目を細めた。シリウス三世は竜也のはるか頭上、階段の上に備え付けられた椅子から静かに立ち上がると、もったい付けたようにゆっくり歩いた。

「一つ目は、この宮廷よりはるか東に位置する『風が吹く町』。二つ目は、それをさらに北へ進んだ『迷宮の村』。そして、最後はそこから西に抜けた『静かな町』」

「静かな町!! 一体、私にそこで何をしろというのですか!」

竜也はその名に立ち上がり、階段に足をかけるように叫んでいた。

「それは言えぬ」

「言えぬって……私がなぜ静かな町に行かなければならないのですが。私は一体何を、何のために」

「行けばわかる」

竜也はギュッと唇をかんだ。

「今はわからぬかもしれぬ。だが、そなたならば行けば必ずわかるはずだ」

シリウス三世は決してそれ以上話をしようとはしなかった。竜也の握った手に爪が食い込んでいる。竜也は怒りの中で長い息を吐き、やっとの思いで口を開いた。

「わかりました。それで、その町へゆく地図は」

「ない」

「私をからかっているのですか。それではどうやってたどりつけというのです。せてめ何か」

「王子も知っているであろう。この国に地図がないことを。自分の手で探すのだ。王子。それがこの旅を託された王子の役目」

竜也はそれ以上聞いても無駄だと思い、目的の場所の名前しかわからぬまま、王の命令を受けた。

「わかりました。仰せのままに」

シリウス三世は竜也の同意に静かに頷くと再び椅子へ座った。宮殿から抜けだせるならどんな理由でもかまわなかった。もしその町についてやるべきことがわからなかったとしても、それはそれで構わないと思った。だが一体、なぜシリウス三世は竜也に「静かな町」へ行けと命じたのか。よりよもよってあの町へ。

スポンサードリンク

「おい、竜也、聞いてるのか? たつや!」

カメリアに肩を叩かれ、竜也は我に返った。

「あ、ごめん」

「ったく、ごめんじゃないよ。この店をでて少し行ったところに、でっかい時計台があるんだってさ。その時計台の鐘の音はこの島のどこにいても聞こえるらしいから。目印には、うってつけだってさ」

カメリアの説明をききながら、竜也は店の外に出た。時計台は確かに店から数分の場所にあった。繁華街についてから目につかなかったのが不思議なくらい巨大な時計台だった。

「この時計台の下で6時きっかりだ」

ユーイチの言葉に竜也とカメリアは時計を見上げた。長針と単身がちょうど12時で重なろうとしている。

『6時間か』

竜也は高くなりはじめている太陽に心の中で呟いた。

「じゃ、ユーイチ、遅れんなよ」

「おまえこそサボるなよ」

「もう、二人とも」

竜也はお馴染みとなったやりとりに顔をしかめてみせる。カメリアが笑顔を見せる。

「竜也は道に迷わないようにな」

「カメリア!」

カメリアは笑いながら手をあげると東の方へと歩きだし、ユーイチは西の方角へと向かった。竜也はもう一度時計台を見上げ、香蘭の真玉に映り込んだ景色、大きな木とそのそばに建つ家を頭に刻み込み、北へ歩き始めた。

「暑いな」

竜也は聞こえてきた鐘の音に汗を拭った。鐘の音から考え、すでに二時間歩いている。だが、竜也は繁華街を飾っているBLUE SKY建築層を抜けることすらできない。

「元老院の住む家を探すために三方に分かれて探した方が、効率がいいと言ったのは僕だけど、森にすらたどりつけない。まさか、カメリアの予言が適中するとは思わなかった」

『竜也は俺かユーイチと一緒の方がいい』というカメリアの意見を遮り、三方に別れた方がいいと言い張ったことに、ちょっとばかり後悔しはじめていた。自分がこれほど方向音痴だとは思ってもいなかったのだ。竜也は思わず苦い笑みを浮かべた。

一ノ宮宮では迷うことなどあるはずがない。竜也は重くなった心と足に喝を入れながら、竜也はとりとめのないことを考えながら黙々と歩き続けた。太陽が傾きはじめ、風が出てきた頃、竜也は前方に広がる角を左に折れ、大きな息を吐いた。

「やっとBLUE SKY建築層から出られた」

香蘭の見た景色からBLUE SKY建築層を囲むように存在する森のどこかに元老院の住む家があるだろうと竜也たちは目星をつけたのだ。竜也は、ほっとした足取りで森の入り口へと歩き出し、足を止めた。何やら大きな荷物を持った女性がうずくまっているのが見える。

「どうかしましたか?」

ほんの数秒前まで疲れていたのも忘れ、竜也は走るように声を掛けた。

「いえ、ちょっと疲れてしまっただけです。少し休めば」

竜也はうずくまる女性にさらに声をかけようとして言葉をつまらせた。荷物を抱えている彼女の目からはとめどなく涙が流れている。

「な、なんでもないんです。ちょっと目にゴミが」

竜也はほんの少し言葉をつぐみ、小さく息を吐くと言った。

「では、この荷物は僕が持ちます。目にゴミが入ったのでは、歩くのもままならないでしょうから」

彼女は竜也の目を凝視し、竜也は慌てて言葉を付け足した。

「安心して下さい。僕は何もこの荷物を持って逃げようなんて思っていませんから」

「いえ、そんなことは」

彼女が慌てて首を横に振る。

「僕の名前は竜也といいます。ある理由でこの都に来ました。決して、怪しい者では」

竜也は自分の格好を見て思わず苦い笑みを浮かべた。宮殿を出る時に着ていた服は旅をするには高価な服で不都合だったため、歓迎の港の骨董市で売り飛ばしてしまっていたのである。今は身分を証明するようなものは一つもない。

「怪しい者ではない、とはいえませんね。しかも、荷物を持ちますなんて」

「いえ、ありがとうございます」

竜也の言葉に彼女は何も聞かず、消え入りそうな声で礼をいうと歩き始めた。時折、道を説明するほかは何も話さず深く沈んでいた。竜也は道の途中にあるベンチを見つけると、少し休んでもいいですかと笑顔を見せた。

「すみません。歩き疲れてしまって。僕は自分でも嫌になるくらい体力がないもので」

竜也のたわいもない話に、彼女は静かな笑みを浮かべていた。だが、その笑みには常に陰がつきまとっている。

「一つ聞いてもいいですか?」

竜也の静かな声に、彼女が僅かに顔を傾ける。

「泣いていましたよね。何かあったのですか」

彼女が困ったような顔を見せた。

「聞いても何もできないかもしれませんが、話すだけで楽になるということもあります」

竜也は彼女のためう顔にハッとした。自分はどうもおせっかいという部類の人間らしい。宮殿という狭い世界にいたせいなのだろうか。それともロイのおせっかいがうつってしまったのか。

「すみません。誰にだって言いたくないことはありますね。それに初対面で、見ず知らずの僕に話すなんて、無茶苦茶な話だ」

「そんなんじゃないです。でも、すみません。」

「あなたが謝ることはありません。僕が勝手に聞いたのですから」

「ごめんなさい。ありがとう。お気持ちだけで。本当にありがとうございました。もう、ここまでで」

彼女は頭を下げると、竜也の手から奪い取るように荷物を持ち歩き始めた。

「あ、待ってください」

「およしなさい」

竜也が後を追おうとした時、後ろから僅かに聞き覚えのある声がした。


スポンサードリンク

TOP